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「廓八景」

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あらすじ

琵琶湖を中心とした近江の八景になぞらえて江戸の公許遊郭「新吉原」の情調を二世桜田治助(号:柳井隣)の美文で彩った作品。三世岸澤式佐が作曲の際、置浄瑠璃として「見渡せば~しらべ替え」までを添えた。節・三味線共に基本の技法が短編に詰まっている景事の作品なので「松島」「鶴亀」「千代の友鶴」などと共に初級の手解きとして扱われる。


詞章


見渡せば 花の吾妻の花川戸① 柳井隣(りうせいりん)②の其の昔 都の春と錦織る 唱歌(しやうが)眩く其の儘を 拙き糸に調べ替へ③

名にし近江の八景を 筆の興(すさみ)に全盛の 里に写して三井寺④や 暮れて花咲く鐘の声⑤ 先ず彼(あれ)を御覧ぜよ 日本一の大門口⑥ 瀬田の夕照(せきせう)今此処に 夕暮れ照らす仲の町⑦ 彩(いろ)の最中(もなか)か姿見も 照る月並みの紋日⑧とて

約束堅き石山⑨や 鳰(にほ)の浮き寝の見ながらも 仇に粟津の晴嵐(せいらん)⑨と 心で止めし居つづけに 嵐は晴れて一時雨(ひとしぐれ) 濡れて逢ふ夜は寝て唐崎の⑨ 松に調ぶる爪音の 琴柱に落つる雁が音の 君が堅田の文使い⑨

更けて青田に焦がるる蛍 櫺(れんじ)まで来て蚊帳の外 帰帆(きはん)も知らで朝迎へ⑩ 早きの後朝(きぬぎぬ)も 今更何と白襲(しろがさね)⑨⑩⑫ 美しや

比良の墓雪⑨をさながらに 描けど尽きぬ粧(よそほひ)⑬は 松の位⑭の品定め⑮ 麗しかりける次第なり

解説


①古今和歌集「素性法師の歌」より。花川戸=浅草にある地名。

②桜田治助の号。

③作曲した岸澤式佐が謙遜して「拙い」と書いた。

④近江の大津にある。

⑤寺の晩鐘と夕暮れに廓の遊女が綺麗に着飾って見世へ居並ぶ事をかけたもの。

⑥吉原大門の事。参考:遊郭

⑦参考:遊郭

⑧参考:遊郭

⑨近江八景。

⑩茶屋から客を迎えに来ること。

⑪客と遊女の朝の別れとかけたもの。

⑫迎えに来たのを今更知らないでは済まされない、という廓の会話とかけたもの。

⑬遊女の美しさは書き表せないほどと賛美した。

⑭遊女の最高位。

⑮毎年、松の位が吉原細見に乗せられたのを品定めするという意味。