HOME > 千代の友鶴

「千代の友鶴」

chiyonotomo.jpg

あらすじ

常磐津宗家家元累代の菩提寺は広尾にある祥雲寺である。この曲は祖先慰霊の意味を持ち成立した一種の鎮魂歌である。

祥雲寺の奥深く、壮厳なる墓所に笠附地蔵の墓所に永眠する霊位を拝み奉り、浮き世を忘却した閑寂の天地に在って四季の自然を語ったものである。

詞章


霞立つ 天(そら)長閑なる時とかや 妙なる法(のり)の祥雲寺 鐘の音冴えて暁(あかつき)の 起き臥し毎(おきふしごと)に塵の世を 忘れて今の楽しさは

四季折節を其の中に 春は谷の戸 旦暮(あけくれ)に① 忍ぶ初音の鶯も いつか綻(ほころ)ぶ梅の花 咲くや此の花色深く 変らぬ春の千代が崎 野辺の遊び土筆(つくし)が原②に 嫁菜摘みつつ芹(せり)薺(なづな)

夏は夜すがら飛ぶ蛍 己が思ひに身を焦がす 山の端末(はずゑ)に入る月の 三日の月かや四日五日いつか傾く月影を 恨み顔なる時鳥(ほととぎす) 啼て過ぎ行く雲間より 降るは五月雨(さみだれ)つくづくと 無情(つれな)く寂し野辺の草 茂る葉末に 露置き初めて 

秋は仇なる眺めかな 招く尾花や萩薄(はぎすすき) 姿優しき女郎草(をみなへし) 其れかあらぬか幻の 蟲の声々哀れなり いつか時雨(しぐれ)に降り変わる 樹々の木枯らし吹き誘ふ 梢(こずゑ)を埋(うづ)む白妙は 花かと擬(まが)ふ積る雪

雪を頂く老いの身③を いつかは此処に千歳経(ふ)る 豊けき澤に棲む④田鶴(たづ)の 鶴の毛衣重ね着て 共に栄ゆる岸澤⑤の 松の齢(よはひ)⑥を弥千代⑦まで 是も畏き君が代の 幾世々懸けて尽きせじと 恵みの末や契るらん

解説


①麻布谷町の事。

②渋谷川の南の原。

③頭髪が雪のように白髪になって年老いた事。

④澤に棲む=「澤住検校」の事。浄瑠璃に三味線を合わせた祖とされる大人物。

⑤同じ「澤」を受け継ぐ常磐津三味線方岸澤家とをかけたもの。

⑥松=常磐津、松の位=太夫。象徴として家元文字太夫の事。

⑦八千代=8000年という永い時間=永遠。